into the nostalgia

夕方から、横須賀に行くことにした。
横浜横須賀道路と本町山中有料道路を使えば、横浜市内から横須賀は近い。

まずは最初のポイントへ。
ドブ板通りのセブンイレブンにバイクを停め、さっそくリサーチ開始だ!

夜のドブ板通りはアメリカ人ばかり。
かつての怪しげな雰囲気を、窺い知ることができる。

さんざん付近を迷った挙句、三笠通りの入口にある目立たない路地を入る。

突き当たりには、「月印 tsuki-jirushi 」という名のカフェがあった。
まるで長野まゆみの作品に出てきそうなカフェ。いつか、立ち寄ってみたい。
月印の横のさらに細い路地を入ると、そこに目指す店がある。

大通りの喧騒と打って変わって、取り残されたかのような静かな路地裏に佇む
「ラーメンつたや」は、ネットで知ってからずっと訪れたかった場所だ。

中からは常連客らしき数名の客の談笑する声が聞こえる。うん、正直かなり入りにくい。
少し躊躇いながらも、せっかく来たんだしと思い切って引き戸を開ける。

こじんまりとした店内とホロ酔いの常連客が視界に飛び込み、会話が途切れた。

「いらっしゃい!おひとり?」

なんだっけなぁ、この感覚。ほんわかと暖かくなるようなこの感覚は。
ああそうだ。北海道ツーリングの時に寄った夕張の「ラーメンのんきや」の感覚だ。

チャーシューメン(750円)は、これぞラーメンというべき昔ながらのラーメンだった。
トンコツしょうゆの家系ラーメンや、趣向を凝らしたラーメンが当たり前の昨今、
50年前からこの路地裏で続くラーメンには、しみじみと沁み渡る旨さがあった。

なんだか暖かい気分になって店を出ると、路地を抜けすぐのところに「丸半三笠焼」がある。
小さい頃から横須賀にくると必ず買って帰った三笠焼の味は、今も変わらない。
焼きたてを頬張る。表面パリッ、中はもちもちの皮を破ると、そこにはたっぷりのあんこ。

「写真、撮ってもいいですか?」
「どうぞどうぞ。たくさん宣伝してね!」
こころよい返事を貰い、はばかることなく写真を撮った。
ラーメンつたやでもそうだったけれどこの一言って、コミュニケーションの第一歩として有効だと実感。

次のポイントは銭湯。調べてみると、少し前までは横須賀には銭湯がたくさんあったようだ。
谷戸の奥まで家が立ち並び、独特の地形を成している横須賀には、銭湯があり、
寺社があり、商店があり、と谷戸がそれぞれのコミュニティとして存在しているように思える。

汐入にある「亀の湯」は、横須賀でも残り少ない雰囲気ある銭湯のひとつだ。
新しいと古いが、米軍に端を発する洋と和が、複雑な地形の中に入り混じる町、横須賀。
汐入の高いビル郡が立ち並ぶすぐ横に、昔ながらの町が残り、その谷戸に佇む銭湯の
熱めの湯に浸かりながら、横須賀の谷戸文化の片鱗に触れた夜の小散歩だった。

2007年9月に再訪したところ、ラーメンつたやは更地になっていました。
終戦直後から続いたお店が無くなったのは残念。本当にお疲れさまでした。

丸半三笠焼は、2018年9月に56年の歴史に幕を閉じました。
慣れ親しんだ味だっただけに、本当に残念です。

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