路線バスの終点へ

熱海は坂の街だ。
背後には箱根へと連なる山系を抱え、山が鋭く相模湾に落ち込む場所に立地する。
平地がほとんどないために、上へ上へと発展せざるを得ない。

街が上へ上へと発展するものだから、人々の足となるバス路線も自ずと上へ上へと伸びており
路線図を眺めて見ると、総じて上昇志向の高い路線ばかりとなっている。

団地下バス停。ネーミングが直球なところもフォントも、待合所の造形も好ましい。

そんなバス路線に惹かれて、まず向かったのはひばりヶ丘。
市営和田山団地、別名ひばりヶ丘団地内にある終着点だ。

待合室内部の広告看板もまたレトロでクスッとしてしまう。

旧小嵐中学校への分岐を過ぎると道はいよいよ1車線となり
山肌にへばりつくようにして頼りなく標高を上げる。
振り返ると遥か後方に相模湾を望むことができる。

本当にこんなところをバスが通るのかしら・・・と訝しく思う頃になって
ようやく、終点のひばりヶ丘折り返し場が現れた。

コンパクトにまとまった折り返し場は、もうこれ以上は進めないと思われるギリギリの場所に立地しており
下には相模湾、上にもまだ団地が聳えていることからなかなかの立体感を感じる。

この日は団地のクリーンデーだったのか、住民の方々が清掃活動をしていた。
場所的に街まで降りるのは大変だろうと想像していたが
本数がそれなりにあるので利便性は悪くないのかもしれない。

先ほどの分岐まで戻り、2014年3月20日をもって閉校した旧小嵐中学校へ向かう。
耐震基準を満たさない校舎は既に取り壊され、草の生えたグラウンドだけが広がっていた。

少し前の地図をめくってみると、この小嵐中学校へもバス路線が伸びていたのが気になっていた。
案の定、正門にはバス停の残骸が残っており、白く褪せた時刻表は辛うじて時間が読み取れる。

平日のみ、朝に3本の熱海駅行き。
この中学校はそれこそ山の中腹、とんでもない勾配を登り切ったどん突きに立地している。
通学時は朝の便で登校するとして、バラバラになる帰りは徒歩で下校していたのだろうか。
知りたい気持ちが止まらない。

次に向かうは、小嵐中学校からずいぶんと下って、伊東線の高架をくぐってしばらくを右折
先ほどとは別の谷を登った中腹にある桜ヶ丘バス停だ。
ここに至るまでの道の狭隘さに、本当にここをバスが通るのかと二度見してしまった。

背後を鋼矢板で装甲した独特のスタイルの折り返し場。
ここの例に漏れず急勾配の最中に設置されている。

これまでは東海バスの路線だったが、最後は伊豆箱根バスが担当する相の原だ。
熱海峠へと向かうあたみ梅ラインを、相の原入口交差点で分かち
ひっくり返りそうになるほどの急勾配を登った果てにある終着点だ。

折り返し場の先は相の原団地敷地内となる。
団地内への道はここまでの勾配に拍車を掛けて急で、少し恐怖を感じるほどだ。

折り返し場にある待ち合いのベンチが可愛らしい。

それにしても熱海の路線の勾配には驚かされた。
決まって団地が海抜が上のほうに立地しているのは、単純に土地の問題なのだろうか。
熱海の地形は横に広がるのではなく上下に広がっており、場所によっては軍艦島のようで興味深い。
また機会を見つけて探検してみたい。

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