飴色の温泉街 前篇

ああ、やって来てしまった。
晩冬の信州に、どうしても。

もうすぐ春だもの。
今のうちに冬の信州で暖まらないと。

鬼無里に、見慣れない貨車が野晒しになっていた。
どうやらこの形式ヨは「車掌車」のことらしく、貨物列車の編成の最後尾に
ちょこんとくっ付いて、車掌が常務するためだけの車両とのこと。

雪のないシーズンには距離が長く諦めていた戸隠神社奥社へのアプローチ。
積雪がある今回はまさに、チャレンジし甲斐があるというもの。

杉並木は見事で、葉から時おりはらはらとこぼれる雪が幻想的だ。

奥社手前の勾配は一番の難所。
雪壁を前に転倒者は続出し、精鋭登攀チームを絶望が襲った。

ちょっと早目の昼食は、中社前のうずら家で。

オリンピック道路を経て、長野市街へ降りてきた。
長野の町は背後にまで山が迫っており、戸隠側から降りてくると突然街に放り込まれる感じが新鮮。

7年に1度の善光寺御開帳が間近なこともあって、善光寺の門前は大変な賑わいだ。

今回はじめて、善光寺が無宗派の寺であることを知った。
仏教が諸宗派に分かれる前からの寺院であるためらしい。

宗派を超え、すべての人に門戸を開いてきた懐の深さが
今日に於いても、人々に愛される名刹たらしめる所以なのだろう。

さらに、旧来の仏教では排他されることの多かった女性を受け入れてきた尼寺であり
本堂最奥部の瑠璃壇に安置された御本尊は、絶対秘仏とされ住職ですら見れないとのこと。

過去も未来も誰も見ることができないため、幾多の火事で既に焼失してしまい
その存在を秘仏化せざるを得ないのではないか、という説も江戸の昔からあるようだ。

なんか、奥深いね。

そのため、御開帳は御本尊ではなく御本尊をモデルにした前立本尊が公開される。

善光寺門前の七味唐辛子の老舗「根元八幡屋礒五郎(やわたやいそごろう)」
ここの唐辛子を見たことはあったけれど、長野にあるとは思っていなかった。
信州は好きなのに、善光寺の基礎知識といいまだまだ知らないことばかりだ。

御開帳缶というのが売っていたので、思わずおみやげにした。

この日は、御開帳に先立って行われる「大回向柱奉納受入式」があり
本堂前の広場を参拝客が取り巻いていた。

回向柱が門前を牛に引かれてここ善光寺前にまでやってくるのには
まだかなり待つ必要があったので、先を急ぐことにした。

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