同じ東京都下でも、150キロ南下すると流石に気候は違い
湿り気を帯びた暑さと微かな潮の香りが、南に来たと感じさせる。

空港から徒歩5分ほどのナカダ自動車。
ここで借りた古いマニュアルミッションのアトレーが今回の旅の相棒。
東京都下最長の平成新島トンネルを抜けると新島北端の集落、若郷に着いた。
全長2,878メートル。離島とは思えない立派すぎるトンネルだ。

新島に行こうと思ったきっかけは、この富士見峠からの風景。
コーガ石で作ったピラミッドの上に立つと、本村とその先の海が一望できる。

素晴らしい景色に目を奪われていると、キィーンというジェット機のような音。
音の方へ目をやると、東海汽船のジェットフォイル、セブンアイランドが。

ここから見ると、新島が2つの島がくっついて出来た島だということがよくわかる。

普通は、この展望台で引き返すんだろうけれど、ここからが本番。
この先にはあるんだよ、あの塔が。
山の上を覆う雲の中に入り、道もダート混じりになっていい感じだ。
軽のマニュアル車は楽しいね。ちょっと荒れた道に入ると楽しさも倍増する。

本当にこの道で合っているのか不安になり始めてしばらく経ったところで到着。

聞き慣れないロラン(LORAN: LOng-RAnge Navigation)とは
GPSは、複数の衛星の電波から自分の位置を特定する仕組みに対し
その衛星が地上の電波局に置き換わった地上版だと思えば理解しやすい。
この電波航法システムには、ロランの他にもオメガ、デッカ等があるそうで
1997年まで対馬にあった対馬オメガ局のオメガ塔は、地上455メートルと
建設当時、東洋一高い建造物であったことは有名な話だ。
GPSが普及した今、これらの電波局は必要性が低くなり運用停止が相次いでいる。

日本にあるロラン局は、北西太平洋ロランCチェーンというグループで
主局の新島、沖縄の慶佐次、日本最東端の南鳥島、北海道の十勝太の4局だけ。
ちなみに、新島ロラン局の高さは200メートル弱もあるらしい。

今度は、島の南へ。
今回最大の目的とも言える白ママ断層を上から見るため、進入ポイントを探し回る。
南端部分一帯は、防衛省のミサイル試験場になっていて、立ち入りは不可能。

次に向かった脇道のドン詰まりに、円形の展望台のような形をした新島VORがある。
正式には超短波全方向式無線標識と呼び、航空機の灯台のようなものだ。

この眺めよ。完全に日本離れしている。
そして、ここからアクセスするは・・・




壮大すぎる、白ママ断層上部からの眺め。

傾斜角度はそれこそ、45度近くありそう。
端境部は写真のように庇状になっているので、そばへ寄るのは危険。

白ママ断層の高さは、250メートル!
ロラン局より高い。
万が一足を踏み外せば、前半で絶命してそのまま海葬だ。
海上から見る景色も圧巻らしいのだけど、白ママ断層クルーズはもうやっていないそうだ。

興奮と感動が収まらないまま、コーガ石採掘場へ。
コーガ石(抗火石)は、ここ新島とイタリアのリパリ島でしか産出しない珍しい石で
水に浮くほど軽く、溶かすとオリーブグリーンのガラスになる。

過激なダートの採掘場を抜けると、そこが石山展望台(向山展望台)。
月面のような地面は細かいコーガ石。
軽石のような素材で、歩くたびにシャリシャリと音がする。

本村の中心部には、おそらく島で一番目立つ店「どさん子ラーメン新島店」があるんだけど
新島の店はここ以外個人商店なのにチェーン店なので特に目立つ。
離島にこんな店があれば、当然確認がてら立ち寄ってみたくなる。

数人いた先客は、いかにもサーファーっぽい感じだ。
実際、ワックスやリムーバーなど、サーフィンアイテムも売っていた。
手際よく調理され出てきた味噌ラーメンは、とてもおいしかった。
近くにあったらリピーターになってしまう癖になる味だ。
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