青春18きっぷの有効期限が、1月20日までだと気付いた。すっかり忘れていた。
卒論準備で余裕はないが、きっぷは意地でも使い切るつもりだ。
日帰り可能な鉄道で行ける温泉をテーマに、群馬県の川原湯温泉を目的地に決めた。
5時台の湘南新宿ラインならがらがらだろうとと思っていたら
ゆっくり座れるどころかラッシュのような混みようで、驚くとともに頭が下がる思いだ。
都会に昇る朝陽を窓の外に見ながら、2時間しか摂れなかった睡眠時間を補うつもりが
国鉄時代と変わらない窮屈なボックス席はゆっくりと寝られたもんじゃない。
高崎駅はすっかり様変わりし、よくある最近の新しく安っぽい駅舎になってしまっていた。
綺麗になることはいいけれど、情緒がなくなるのは残念。
吾妻線に乗り継いで山へと分け入ると、窓から入るすきま風がだんだんと冷たくなる。
雪化粧した吾妻渓谷にへばり付くように急勾配を登ると、やがて川原湯温泉駅に着いた。
今日は、紅白に分かれ湯を掛け合う有名な奇祭、湯かけ祭りの前日ということもあり
もっと観光客がいると思っていたが、そんなことはない。数組の観光客がいるのみだ。
ひとり旅っぽい、カメラを提げた同い年くらいの綺麗な女性がいた。川原湯とは渋い。
駅から閑散とした通りを10分ほど歩くと、温泉街の中心に辿り着く。
下調べしてきたにも関わらず、あまりにも存在感がなく王湯を通り過ぎてしまった。
王湯だけでなく、町全体が静まりかえり、寂れた暗い雰囲気に満ちている。
まるで、昭和でストップしてしまったかのような感覚を覚える。
それもそのはず、この川原湯温泉は数年後に完成する八ッ場ダムによって湖の底に沈む。
湯かけ祭りの会場となる王湯は、祭りを翌日に控えひっそりと静まり返っていた。
番台のおばさんに入湯料300円を払い、中に入る。
内湯と露天風呂は離れていて、露天風呂がある離れへは渡り廊下を歩いてゆく。
誰もいなかったので、写真を撮ることができた。
脱衣所から階段を下りた所にある内湯は、独特の構造。
微かに硫黄の香りがするお湯は42度ほどの適温で、もう最高に気持ちがいい。
後から入ってきたおじさんによると、午前中は熱くて入っていられないらしい。
王湯を出て、川原湯神社へ向かう。数年前に全焼した本殿は、新しく建て替えられたようだ。
ダムができれば、ここが最高水位となる。
ここからの景色も、ずいぶんと変わってしまうだろう。
今回の旅で是非寄ってみたかったのが、風情たっぷりの共同湯「笹湯」だ。
もはやバラックのような出で立ちで、思わず微笑んでしまった。
協力金300円を払って中に入ると、地元のお爺さんがひとり湯に浸かっていた。
笹湯は、浴室と脱衣場が一緒になった構造をしている。
ちょうどよい湯加減の湯に浸かっていたら、なんだか沁み沁みとしてしまった。
こうなったら共同湯全湯に入り尽くそうと思い、聖天様露天風呂に向かう。
ここは高台にある露天風呂で、しかも混浴。
もしかしたらさっきの女性も、なんて淡い期待はおじさんたちにかき消された。
共同湯にすべて入ってみたけれど、個人的には笹湯の雰囲気がとても好き。
現在、川原湯と対岸の川原畑地区の住民はどんどん転居しているという。
川原湯地区
平成12年-世帯数156世帯・人員461人
平成17年-世帯数75世帯・人員234人
川原畑地区
平成12年-世帯数80世帯・人員211人
平成17年-世帯数30世帯・人員83人
思い出を振り返りながら、この静かな温泉場を後にした。
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