東京湾要塞島

昨晩、ネットで軍艦島について調べていたら、無性に島に行きたい衝動に駆られ
大人になってからちゃんと行ったことのなかった「猿島」へ行ってみることにした。

8時30分出航の始発便に間に合うように国道16号を快走し、10分前に三笠港着。
猿島までは往復1200円。本数は1時間に1本。最終は17時の便だ。

始発便の客は自分ひとり。あとは売店の従業員と船員だけだった。
朝の便には釣り客がいる、という前情報があったので少し意外だ。

結構高い波間を越えて、徐々に島影が近くなってくる。
桟橋に降り立つと、昨晩の衝動がこの瞬間達成されて興奮した。

従業員の方々は、浜にある売店へと向かう。その横を通り過ぎ、まだ人のいないその先へと進む。
やがて道は切り通しになり、ネットでよく目にする光景が目の前に広がった。

苔むしたレンガ。両脇に並ぶ塞がれた部屋。そして、フランス積みのトンネル・・・。

鮮烈な風景に、新鮮な驚きと興奮を憶えたのも束の間、
不気味に口を開けるトンネルを前に、その感情は恐怖へと変わった。

島の入り口にある売店にこそ人はいるものの、ほぼ島に自分ひとりの状態。
人はいないはずだけれど、何十年も前に作られた人工物の中で不思議と感じる人の気配。

暗く湿った長いトンネルを、足早に歩いた。
風が後ろから追い越してゆく。

今回の目的であった要塞跡は、圧倒的なリアリティを従い、確かにそこに存在していた。

戦争の歴史。日本海軍下に置かれた、東京湾の前線たる要塞の歴史。
そんな暗い歴史と共に、この猿島は自然に満ちた島でもあった。

島の南端の砂鉄の浜からは、戦争の歴史を今に伝えるこの島とは対照的に
同様に軍都としての歴史を歩み発展した、近代的な横須賀のビル群が一望できる。

島から帰る船の中、過去から現代へ帰るような、そんな不思議な感覚に陥った。
異世界のような雰囲気を漂わせる場所が、こんなにも身近にある。

近くだからこそ見えてない、そんな灯台元をこれから照らしてゆきたいと思った。

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