日本を発ったのが朝なので現在は23時を回った頃だが、ドイツはまだ昼。
西へ西へ地球の自転に逆らって、今日を遡ってきたわけだ。
確かに飛行中は、極地近くで日が傾きはしたものの、日が沈むことはなかった。
アイルランドとイギリスを除くEU加盟国と北欧数ヵ国は
共通国境となるシェンゲン協定加盟国でもある。
ドイツで入国審査を受ければ、シェンゲン加盟国内の移動に審査は必要ない。
ヨーロッパと一言で言っても、その広さは広大。
予定を組み上げるにも、行きたい場所が多すぎて大いに悩み、机上でもう旅行した気分にすらなった。
結局、本場のクリスマスの雰囲気を味わいたいという思いから
今回は、クリスマスマーケットが立つ町をメインに組み立てた。
入国審査を終え、晴れて自由の身になれたのは15時近く。
今日はもう、本日の宿に向かうだけだ。
行くだけとは言え、ここから宿のあるフランスのコルマールまでは東京から長野よりまだ遠い。
がしかし、この距離は今日のうちに稼いでおきたい。
特急ましてや鈍行では、とても今日中に辿り着けそうにないので
ドイツ版新幹線ICE(Inter City Express)を利用すべく
あらかじめ、DBオフィシャルサイトからチケットを日本に郵送して貰った。
本当に、便利な世の中になったね。
フランクフルト国際空港駅(Frankfurt Flughafen Fernbf)のホームには
とっかえひっかえ、向かう国も様々なICEが滑り込む。
この感覚は、日本にはないものですごく新鮮だ。
そして、ICEの美しさに思わずため息が漏れた。
シンプルでセンス良く、高級感も抜群!
新幹線のように動力分散式になったICE3のVVVFインバータの音は
同じシーメンス製、通称ドレミファインバータに近い音質だった。
15:54、ドルトムント発のバーゼル(スイス)行に乗車
コルマールまでの料金は69.3ユーロ(8582円 2010年3月現在)
日本と同じくらいの相場かな。
内装もまた美しく、余裕のあるシートに体を任せる。座り心地は最高だ。
ヘッドレストもまるで枕のように頭を包む。
雨が零れる垂れこめた雲、暗くなり始めた風景をぼんやりと眺める。
夕暮れの藍に浮かぶ町のシルエットには教会の尖塔が混じり
家々の窓から漏れる白熱灯のオレンジと併せて、異国を強く感じさせる。
・・・マンハイム
・・・カールスルーエ
ところどころ大きな都市は通るものの、総じて町の明かりは暗い。
煌々と無駄に明るいアジアの町とはまったく印象が違う。
興奮はここにきてすっかり冷め心細くてどうしようもなくなってきた。
どうしようもないほどのひとりぼっち感。
なんかもう、帰りたい。
オッフェンブルクで、ICEからOSB(Ortenau-S-Bahn)に乗り換えストラスブールへ。
2両編成の斬新な車両で、日本でいう地方のローカル線の趣。
仕事帰りの人々に交じって、学校帰りなのか少年たちが乗っていた。
こちらの子供は可愛いね、まるでお人形さんみたいだ。
ドイツ最後の駅を出発すると、ライン川を渡り呆気ないほど簡単にフランス入り。
今までより規模の大きい町の明かりが近づくと、やがてストラスブールだ。
ここまで来ればあとひと息。
18:23、チューリッヒ(スイス)行のIC(Inter City)に乗車
ヨーロッパは照明が暗いとは聞いていたけど、この車両の暗さはまるでアンティークの世界よ。
車内は混んでいて、一応指定券を持っていたけれど先客が座っていた。
気分的にもネガティブになっていたので諦めて最後尾のデッキに向かうと
青年のグループが座り込み、横では黒人のおじさんがパンをかじっていた。
「ここ、いいですか?」
というジェスチャーをし、隣に座らせて貰う。
言葉も外見も違う人間に囲まれ、座って列車に揺られていたら
異国を旅してるんだという実感がようやく沸いてきてテンションが上がった。
コルマールに着いたのは19時。
プラットホームに降り立つと、用意してきたグーグルマップの衛星写真のプリントを広げ
風景と照らし合わせながらユースホステル「auberge jeunesse colmar」へ向かう。
とにかく早く宿へ着きたい一心で、日の落ちた路地を気を張り詰め歩くこと20分。
やっと着いた。
こちらではクレジットカード決済が非常に一般的で、ここでもカード決済のみ。
1泊朝食付13.75ユーロ(1900円)
充分すぎるほど快適な部屋だ。
ドミトリーだけど、幸いなことに同室者は誰もいなかった。
今日だけは、一人でぐっすりと眠りたい。
英語のメールを送って予約するのは苦労したけど、予約しておいて本当に良かった。
暗くなってから現地で探すのは、精神的にかなり厳しい。
もし宿が決まっていなかったら、心が折れていたかもしれない(笑)
他の部屋では、学生たちが何やらフランス語でお祭り騒ぎだったけど
疲れていたので、シャワーを浴びて夕飯も摂らずあっという間に眠りに落ちた。
明日への不安と期待を胸にしながら。
続く。
コメント