その先の日本へ 前篇

通りすぎる町の灯かりが、淡い残像となって流れてゆく。
心地よいレールのジョイント音と揺れに身を任せ、やがて眠気がやってきた。
幾多の町と夜を超えて、夜行列車は西へと向かう。

雪が見たい。
突然の衝動を抑えることができず、旅へ出ようと思った。
今回は、冬の郡上八幡を鉄道で訪れる。そんな旅。

ムーンライトながらは、東海道本線の東京と大垣を結ぶ快速夜行列車だ。
高山本線の分岐駅、岐阜で降り立つとちょうど朝焼けに出合った。

美濃太田からは、長良川鉄道で長良川に沿って北上する。

うだつの上がる町並みを見るために、美濃市で途中下車。
うだつとは、屋根の上にある小さな屋根みたいなもののことをいうようだ。

美濃市の隣、梅山駅は乗降所だけの小さな駅。
吹きっ晒しのホームで列車を待っていると体の芯まで凍えそうになった。
1両きりのレールバスは、高らかなエンジン音を響かせ思ったよりも軽快に走る。
山へ分け入るにつれ、チラホラと雪が舞い出した。

見覚えのある駅舎や鄙びた跨線橋が目に入った。
ようやく郡上八幡に着いた。

冬の郡上八幡は、春や夏とは違い、無彩色の空気の中に佇んでいる。

前から食べてみたかったあまごそば(1100円)

とにかく寒いし腹も減ったので、本町にあるそばの平甚へ入る。
あまごそばは、長良川で獲れたあまごの甘露煮がそばの上に乗った逸品だ。

あたたかいぜんざい(300円)が体に沁みる

すこし町を歩いたところで、八幡町役場の中にあるこびり処で休むことにした。
こびり処は、郡上八幡の婦人農産加工グループが運営している軽食・喫茶処。
食材のすべてが郡上産で、しかも価格がリーズナブルという素敵な店だ。

前から食べてみたかった明宝ハムは、お隣は旧明宝村の名産品。
表面をサッと焼いた明宝ハムは、肉の旨味が凝縮されていてとても美味しかった

前に訪れた時に印象に残った慈恩禅寺荎草園の雪景色が見たくて訪れたら、積雪により拝観休止。
積雪によりとはいうものの、その雪景色が見たかったんだよね。

ユースホステルに向かう。チェックインが15時半なので寒いと時間を潰すのが大変だ。

途中、渡辺染物店に立ち寄る。創業以来430年余りに亘り続く郡上藍染の店だ。
重要無形文化財である主人が染める藍染は、化学染料を一切用いず
天然本藍のみを使い、昔ながらの工程を守り続け染められている。

郡上みそ煮定食(1500円)

夕飯は、お決まりの郷土料理の店大八へ。
何より渋い郡上味噌を使った味噌汁が絶品だった。

続く。

  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする