冬富士登坂

冬の富士で起きた片山右京パーティの遭難事故や
2019年にはニコニコ動画を生配信しながら滑落した事故も記憶に新しい。

冬富士は、ヒマラヤ以上に危険

ベテラン登山家をしてそう言わしめるほど、冬の富士は危険な山らしい。
風が強く天候が変化しやすい独立峰という特異な環境が、そうさせるのだと・・・

今回は、そんな冬の富士山の5合目を・・・
カブで目指そうというわけだ。

ちなみに、この写真を撮っているのはかつてのムーラン乙女があった場所で
久しぶりに通ってみたら、美華ガーデンというドライブインになっていて驚いた。
しかもこの日は、観光バスまで乗り付ける混雑ぶり。

廃墟好きを謳っておきながらおかしいけれど、やっぱり生きた建物っていいね。

須走を越え、いよいよふじあざみラインの入口に立つ。
ここに来るまでにさっそく、冬季閉鎖を告げる立看板があった。

いよいよ以て、興奮してきた

と言うのも、今回の計画は立案の段階からかなりの盛り上がりを見せた。

まず、スーパーカブ110のサマータイヤ=純正タイヤ(IRC製)では雪道は走破できない。
純正と同じIRC製のSN-1や、スタッドタイヤまでをも選択肢に入れ吟味を重ねた結果
ダンロップのD502に落ち着き、戻す時の交換費用を考えて工具まで揃え自分で換装。

カブ用のタイヤでは残念ながら四輪で一般的なスタッドレスは発売されておらず
発売されているのはスノータイヤと呼ばれる雪上走行に対応したタイヤだ。
これはスタッドレスとは違って氷上やシャーベット状の路面には弱い。

さらにアイスバーン等の氷路面にも万全を期すため、チェーンの導入を考えたが
耐久性とコストパフォーマンスから荒縄がいいのでは?と思い立ち次は荒縄の選考。
ごく一般的に荒縄として売られているワラ縄ではおそらくすぐに切れてしまうと考え
強度の強いナイロンが浮かんだが、これだと氷の上を滑ってしまい喰い付きそうにない。

ある程度繊維が毛羽立っていて氷を噛み、なお且つ強度も兼ね備えた縄を探した結果
化繊が普及する前は船舶用ロープとしても使用されていたマニラロープが急浮上。
これなら防水性もあり天然繊維にしては強度もあり、かつその繊維が氷を噛みそうだ。

撚り方と太さが選べるが、細すぎるとタイヤの溝にはまってしまい意味がなく
かと言って太すぎても巻くのが大変だし、氷の上でロープが滑ってしまいそうだ。
散々タイヤとにらめっこし、辿り着いたのは・・・

マニラロープ3本撚 φ8mm

そして何より、万が一タイヤが滑り車体が動揺したときに足が滑っては元も子もない。
そこで普段の靴に装着するだけでスパイクシューズになる簡単スノースパイクを発見。
さっそくこれらをインターネットで注文し、嬉々として今回持ってきたというわけだ。

最初のゲートが姿を現した。

ここからは自己責任の世界だ。
気が引き締まると同時に、興奮でマニラロープを持つ手を強く握った。

馬返しにさらにゲート。
どうやって運んできたのか?ってくらい大きなコンクリート塊が置かれていた。

しばらくは、冬だということを忘れさせるほどの快適な路面が続く。

雪だ!

獣の足跡ひとつない雪面が現れた!

さっそくマニラロープをタイヤにぐるぐる巻きにする。
試しにそろりそろりと走ってみると滑らない。大丈夫だ。

どうだ!とばかりにマニラロープを巻いていない友人を見てみると、滑っていない。

登るにつれだんだんと雪も深くなってきた。
徐々に我々のテンションも上がってゆく。
が、今度は雪にタイヤがスタックしてなかなか進めなくなってきた。

補助輪よろしく足で雪を漕いでみたり、跳ねてトラクションを掛けてみたり。
四苦八苦しながら何とか前進。

調子よく行くとけっこう走れるけど、ハマるとなかなかスタックから抜け出せない。

スノータイヤの溝にみっちりと雪が詰まり、これって意味あるのかな?

え、なに?
うん、マニラロープはとっくに外してます。

ヒーンッ!

もう駄目だ。進めない。
だって手を離してもカブが立っちゃってるもの。進めっこないよ。

車輪が付いた乗り物でこれ以上進むのは不可能!

結局5合目までは到達できなかったが、カブで行けるところまでは行った。
道路上とは言え、これ以上頑張っても日没が訪れリスクが高くなる。

どうか勘違いはしないで欲しい、これは勇気ある撤退だ。

帰り掛け、登山用のザックを背負った男性が道を登ってきた。
今日はここで野営して、明日の早朝から富士山に登るという。
やはりこの時間に設営するのが正しいのだろう。

撤退の判断は合っていた。

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