温泉チルアウト・・・
温泉地を舞台に、電子音楽のライブと光のインスタレーションを楽しむ
というまったく新しいライブの在り方を予感させるムーブメントだ。
「鳴響 ph:2.0」と銘打たれているだけに、今回の舞台は東北は鳴子温泉。
いざ行かん、東北大陸へ。
新庄行きの山形新幹線は、東急車輛製E3系2000番台。
デザインを担当したのは工業デザイン界の重鎮、榮久庵憲司率いるGKインダストリアル。
福島までの専用軌道を滑らかな走りですっ飛ばし
そこからは在来線に乗り入れて、奥羽本線を山形方面へ。
この辺りが、何だか高速道路を降りて山へ向かうようで興味深い。
板谷、峠などの急峻な山岳地帯を登坂し、庄内平野を120キロで縦走する。
福島~新庄間は、本来は線路幅の異なる新幹線と在来線車両が混在するため
路線自体が標準軌化された上、標準軌の在来線車両を用いる珍しい区間だ。
1999年に延伸された新庄駅に着くと、新幹線と在来線の2ショットが撮れた。
ここから先は、陸羽東線。
やっぱりローカル線はいいね。
新幹線だと移動だけど、こちらは旅という感じがする。
鳴響は、鳴子御殿湯駅でのライブ&トークショーから始まった。
涼音堂茶舗のアーティストたちが奏でるサウンドは、まさにアンビエント。
電子音楽でありながら、まわりの風景と緩く溶け合い同化してゆく。
ゲストに温泉チャンピオンの郡司勇氏を招いてのトークショーは
鳴子温泉の多種多様な源泉の話を中心に、かなりマニアック。
鳴響は、終日場所を変えながらイベントが進行してゆく。
次のイベントまで待ち時間ができたので、さっそく温泉に浸かりにゆく。
その強烈な佇まいで、一部では有名な東鳴子温泉は田中温泉。
今月いっぱいで営業を辞めてしまうとのことで、最初にして浸かり納め。
既に営業してない、否、廃墟にしか見えない感じに思わず怯んだが
おそるおそる中へ入れば、それなりに客はいるようだ。
お婆ちゃんに交じって、友人と隅で小さくなって入った混浴の温泉は
鼻につんとくる石油臭と灰色の湯の花が特徴的ないい湯だった。
実は、田中温泉の佇まいに怯んで、まずは向かいにある高友旅館へ入ってしまったのだ。
この旅館は黒湯が有名らしく、浴室に入った途端に強烈な石油臭が鼻を突く。
泉質という面では、こちらの湯の方が数段インパクトがあったかな。
実際に、帰って数日間風呂に入ってるのにも関わらず身体から石油臭がしてきたほど。
鳴子御殿湯駅へ戻ると、舞踏家である森繁哉先生演じる注目のパフォーマンス
「鳴子温泉に降り立つ旅人2009」が、今まさに始まったところだった。
ディーゼルエンジンの音を残し気動車が去ると、ホームには旅人が残された。
刮目せよ!
先生の迫真の演技に、瞬きを忘れてただただ見入る。
先生に連れ立って、ハーメルンの笛吹きの如く次の列車で隣駅鳴子温泉へ。
当然車内でもパフォーマンスは続き、乗り合わせた一般の皆さんは
一体何が起こっているんだとばかりにきょろきょろとしている。仕方がないことだ。
去年も大好評だった、というだけはあった。
映像を見せられないのが悔やまれてならないが、この動きには惹き込まれる。
本日の宿、もといライブ会場となる「姥の湯旅館」へ向かう前に
鳴子名菓の栗だんごを食べることにし、一之坂餅店へ。
おいしい漬物をツマミながらしばらく待つと、栗だんご登場。
あつあつの餡と、もっちりとした餅に包まれたほっくりとした栗が絶妙!
本日の舞台である姥の湯旅館は、自炊棟を備えた湯治宿だ。
この宿を借り切って、今回の「鳴響 ph:2.0」は開催される。
ライブが始まっても、ありがちな喧騒はない。
なんて言えばいいのだろう。
それぞれが思い思いに、音楽やゆるい場の雰囲気を愉しんでいる。
遠くに流れるチルアウトに耳を傾けながら杯を交わし
思っていた以上に豪華だった夕飯をいただいた後は
大広間で夕方から深夜まで続くライブに足を運ぶ。
ゆるくてぬるくて心地いい。
新感覚だ。
日常を離れた異空間に、漂ってるような感覚。
さまざまなアーティストが出演するが、どの曲も決して騒がしくはない。
環境音楽であるアンビエントと、ライブ会場での火照りを冷ます
チルアウトのスタイルにどこまでも沿って、淡々と進んでゆく。
途中、マッチしているのかしていないのか解からない佐藤民男さんの民謡&電子音楽のセッションが組まれたり
先生の水をイメージしたインパクトあるセッションが組まれたりと、飽きさせない構成になっている。
鳴響は、光の空間演出もまた魅力のひとつだ。
姥の湯旅館に続く道には光の回廊が演出され、旅館内も至る所が彩られている。
光に包まれた露天風呂に浸かりながら聴くライブもまた、格別だった。
温泉チルアウトは、究極に贅沢で、そして大人的な
ライブの新しい愉しみ方かも知れない。
翌朝早く宿を出た我々は、新幹線で一気に現実へ・・・
そして、昼から仕事に復帰しましたとさ。
コメント