石炭産業が特に盛んだったのが、北海道とここ九州だった。
残念ながら、軍艦島クルーズ上陸コースはうねりの影響で欠航となったが
周遊コースだけでも出航してくれることに感謝したい。

長崎を訪れた最大の目的は、ほかならぬ軍艦島(端島)訪島だ。
小学生の時に百科辞典で見た軍艦島の異容に衝撃を受けて以来
憧れであり続けた場所であり、廃墟が好きになったのも軍艦島がきっかけだ。
船は大波止をゆっくりと離れ、往時の生活路線であった連絡船と同じ航路を辿る。
望郷の端島よ。
今、還ります。
胸の高まりが止まらない。

長崎港を占有する三菱重工業長崎造船所を眺める。
長崎といえば個人的にまず浮かぶのは三菱であり、歴史ある長崎造船所である。
古くは戦艦武蔵に始まり、図らずもコロナ感染でその名を広めた世界最大級の客船ダイヤモンドプリンセスと
艤装中に火災を起こした姉妹船サファイアプリンセスの建造でも知られる。
もとを正せば、軍艦島も三菱石炭鉱業高島鉱業所端島砿という三菱の保有砿だった。

軍艦島は、昨今の廃墟ブームと一般開放で一躍有名になったこともあり
それこそ各社から千紫万紅の如くさまざまな出版物が刊行されている。
だが、個人的にオススメしたい本は「軍艦島実測調査資料集」であり
精緻に島を調査し尽くした至高の軍艦島本であると同時に唯一無二のバイブルであるとここに断言したい。
この本、1984年に第一版が刊行されて以来増販されていなかったのだが
反響の大きさから、第二版、追補版として増販された経緯がある。
手軽には入手できないけれど、ある程度の規模の図書館で閲覧できるはずだ。

そんなことを思っているうちにも船はどんどんと進み、高島(高島炭鉱は1986年に閉山)を通過する。
高島と軍艦島の間には、火葬場が置かれた中ノ島がある。
その刹那、船上がざわめき立った。
中ノ島の、その島影から・・・

鳥肌が立った。

頭の中で思い描いていた姿が、

ざらっとした圧倒的な質感を伴いそこに存在していた。

孤高に佇むその崇高さに。

狂ったようにシャッターを切る。
みな、そうだった。

少し落ち着きを取り戻し、改めて軍艦島と対峙する。

感動だろうか?
畏敬だろうか?
それとも尊崇だろうか?
体験したことのない感覚に魂を揺さぶられ、目頭が熱くなった。

軍艦島よ、ありがとう。
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