学校帰りにふと、近くに有名な蕎麦屋があることを思い出した。
明治17年創業、江戸前蕎麦の老舗「神田まつや」
店の前を通るたび、その風情ある佇まいに一体何の店なのか気にはなっていた。
その店が、有名な蕎麦の老舗と知ったのは比較的最近のことだ。

がらりと引き戸を開けると、その落ち着いた佇まいの店前とは打って変わって
会社帰りのサラリーマンやその他大勢の客が、肩を寄せ合いながら座っていた。
あ、良いなぁ。
店の喧騒に包まれた瞬間、そう感じた。
蕎麦ってのは庶民的な食べ物であるべきなんだなと思う。
ちらりほらりと、和服を纏った年配の方が悠々と蕎麦を手繰っている。これが粋か。
所狭しと座る客の間を、店員がテキパキと手際よく動き回っている。
店の隅のテーブルに案内され、迷わずもり(550円)をオーダーした。

出された蕎麦は、香り高く喉越しがよい、なんていうと格好つけているようだけれど
ずずずと豪快な音を立てて飲み込むようにして食べると、また何とも心地よい。
江戸前の濃い目のつゆと相まってこれが蕎麦だと思わせるに相応しかった。
独酌で蕎麦前をちびちびやりながら、にしんの甘露煮でもあてにして、最後に蕎麦をすすり
そのまま近くにある甘味処竹むらで甘いものでも食べれば、うん言うことはないな。
次を楽しみにしながら、江戸の粋が息づくその店を後にした。
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